栃木県足利市。ここは「足利学校」や「足利フラワーパーク」で知られる歴史の街ですが、実は全国の蕎麦好きが「聖地」と仰ぐ場所であることをご存じでしょうか。
市内には数多くの蕎麦屋が軒を連ねていますが、どこもかしこも個性的。江戸時代から続く技法を守る老舗もあれば、お腹いっぱい食べたい人を唸らせるデカ盛りの店、さらには山を登った先にある絶景の隠れ家まで、バリエーションがとにかく豊富なんです。
今回は、足利で本当においしい蕎麦屋を探しているあなたのために、地元でも愛される名店から知る人ぞ知る穴場まで、10店舗を厳選してご紹介します。この記事を読み終える頃には、きっと足利へ向かう電車や車の中で「どの一杯を啜ろうか」と迷っているはずですよ。
足利の蕎麦を語るなら外せない「一茶庵」の物語
足利の蕎麦文化を支えているのは、間違いなく「一茶庵(いっさあん)」の存在です。大正時代に創業されたこの店は、現代の蕎麦打ち技術の基礎を築いたといわれる片倉康雄氏が拓いた場所。全国に広がる「一茶庵系」の総本山として、今もなお圧倒的なオーラを放っています。
ここの代名詞といえば、なんといっても「五色そば」です。真っ白な更科、香ばしい芥子の実を打ち込んだもの、爽やかな茶そば、野趣あふれる田舎そば、そして標準的なせいろ。一枚の盆に並ぶ色彩の豊かさは、もはや芸術品の域に達しています。
足利の歴史を肌で感じながら、職人の研ぎ澄まされた技を堪能する。そんな贅沢な時間を過ごしたいなら、まずはこの一茶庵 本店を訪ねるのが王道です。ただし、営業時間は11時30分から14時までと非常に短く、売り切れ次第終了となってしまうので、余裕を持って足を運ぶことを強くおすすめします。
相田みつをが愛した「めん割烹 なか川」で心に触れる
足利が生んだ偉大な詩人・書家である相田みつを氏。彼が50年もの間、足しげく通い詰めたのが「めん割烹 なか川」です。店内に入ると、氏の直筆作品がそこかしこに飾られており、まるで小さな美術館のような趣があります。
相田みつを氏が好んで食べたといわれるのが「にしんそば」です。じっくりと炊き上げられた身欠きにしんの甘露煮は、箸を入れるとホロリと崩れる柔らかさ。その旨味がつゆに溶け出し、蕎麦の香りと見事に調和します。
また、ここでは「在来種」の蕎麦にこだわっており、力強い大地の香りを感じることができます。夜には厳選された日本酒も豊富に揃うため、蕎麦前(蕎麦を食べる前のお酒とつまみ)を楽しみ、最後に蕎麦で締めるという粋な楽しみ方も可能です。落ち着いた雰囲気の中で、ゆっくりと言葉と味に向き合いたい時にぴったりの一軒です。
織姫神社の絶景と共に味わう「蕎遊庵」の粋
足利の街を一望できる朱塗りの美しい神社、織姫神社。その境内に店を構えるのが「蕎遊庵(きょうゆうあん)」です。229段の階段を登った先にある(車でも行けますが)このお店からは、関東平野が見渡せる素晴らしい景色が広がっています。
店主は、江戸前の手打ち蕎麦に並々ならぬ情熱を注ぐ職人。食べログの百名店にも選出されるほどの実力派です。特筆すべきは、蕎麦の繊細さ。特に、極細に打たれた「更科そば」の喉越しは驚くほど滑らかです。
季節によって変わる「変わり蕎麦」も見逃せません。春には桜の香りを、冬には柚子の香りを打ち込んだ蕎麦が登場し、四季折々の風情を舌で楽しませてくれます。参拝の帰りに、吹き抜ける風を感じながら啜る一杯は、心まで洗われるような心地よさがあります。
地元民の胃袋を支える「そば処 山」の衝撃デカ盛り
観光客向けの名店も素晴らしいですが、地元足利の人々が「安くて旨い、お腹いっぱい食べたい!」という時に真っ先に名前が挙がるのが「そば処 山(やま)」です。ここは、知る人ぞ知るデカ盛りの聖地。
初めて訪れる人は、普通盛りを注文して目を丸くすることになるでしょう。一般的な蕎麦屋の2倍以上はある250gの蕎麦が、これでもかと盛り付けられています。しかも、ただ量が多いだけではありません。蕎麦そのものの香りもしっかりしており、コシも抜群です。
おすすめは、足利名物の「大根そば」。細長く切った大根を蕎麦と一緒に茹で上げたもので、大根のシャキシャキ感と蕎麦のツルツル感が合わさり、大盛りでも最後までさっぱりと食べ進めることができます。開店前から行列ができる人気店なので、気合を入れて向かいましょう。
家族連れにも嬉しい「手もみそば いけもり」の安定感
広い駐車場とゆったりした店内。家族やグループで訪れるなら「手もみそば いけもり」が非常に便利です。足利の良質な地下水を使用し、店内の石臼で挽いた自家製粉の蕎麦を提供しています。
ここの魅力は、そのバランスの良さ。蕎麦は「手もみ」という店名通り、独特のウェーブがかかった麺が絶妙につゆを拾い上げます。サクサクの大きな天ぷらや、ボリューム満点のミニ丼セットも充実しており、食べ盛りの子供からお年寄りまで誰もが満足できるラインナップです。
地域密着型の温かい接客も魅力の一つ。気取らず、それでいて本物の手打ち蕎麦を味わいたいという日常使いに最適な名店といえます。
隠れ家のような「明治庵」と「十勝屋」で静寂を味わう
中心部から少し離れた場所にも、名店は点在しています。例えば「明治庵」は、住宅街の中にありながら、そのクオリティの高さから口コミで人気が広がったお店。非常に丁寧に打たれた蕎麦は、端正な見た目と上品な香りが特徴です。
また、松田町の自然豊かな場所にある「十勝屋」は、まさに大人の隠れ家。周囲の緑に癒されながら、素朴で力強い蕎麦を啜ることができます。都会の喧騒を忘れ、蕎麦そのもののポテンシャルとじっくり向き合いたい時には、こうした郊外の店舗へ足を伸ばしてみるのも一興です。
足利の蕎麦歩きをさらに楽しむためのコツ
足利で蕎麦を楽しむなら、ぜひ「蕎麦の種類」にも注目してみてください。
多くの店では、喉越しの良い「せいろ」だけでなく、殻ごと挽いた黒っぽい「田舎そば」、そして蕎麦の実の芯だけを使った真っ白な「更科そば」を選べるようになっています。同じ足利の蕎麦でも、店や種類が変われば味わいは全く別物。数人で訪れるなら、それぞれ違う種類を頼んでシェアしてみるのも面白いですよ。
また、足利の街歩きには歩きやすい靴が欠かせません。ウォーキングシューズを履いて、石畳の残る街並みを散策しながら、お目当ての蕎麦屋へ向かう。そんな時間の使い方が足利にはよく似合います。
食べ終わった後は、織姫神社で縁結びの祈願をしたり、鑁阿寺(ばんなじ)の国宝を眺めたり。お土産には、足利銘菓などを探してみるのも楽しいものです。
足利のおいしい蕎麦屋10選!名店「一茶庵」からデカ盛り・隠れ家まで地元民が厳選
いかがでしたでしょうか。足利の蕎麦は、単なる食事を超えた「文化」としての深みを持っています。
一茶庵の歴史に触れ、相田みつをの心を感じ、織姫神社の絶景に癒され、そして地元の活気あるデカ盛りに驚く。これほどまでに多面的な魅力を持つ蕎麦の街は、全国を探してもそう多くはありません。
今回ご紹介した10店舗は、どこを選んでも足利の蕎麦の魅力を十分に堪能できる場所ばかりです。季節や一緒に行く相手、その時の気分に合わせて、あなたにとって最高の「運命の一杯」を見つけてください。
豊かな香りと喉越し、そして店主たちのこだわりが詰まった足利の蕎麦。一度味わえば、あなたもきっとこの街の虜になるはずです。次の週末は、お腹を空かせて足利の街へ出かけてみませんか。

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