お気に入りのグラスを傾け、琥珀色の液体が喉を通り抜ける瞬間。ウイスキー愛好家にとって、これほど心が解きほぐされる時間はありません。最近では、自宅で楽しむだけでなく「最高の環境で、最高の一杯を飲む」ことを目的とした旅、いわゆる「ウイスキー・ツーリズム」が注目を集めています。
せっかく旅に出るのなら、寝る直前までその余韻に浸りたいもの。今回は、全国各地にある「ウイスキー愛が溢れるホテル」を厳選してご紹介します。蒸留所の熱気を感じる宿から、伝説のボトルが眠るオーセンティックバー併設のホテルまで、あなたの知的好奇心を満たす至福のラインナップです。
蒸留所の鼓動を感じる「産地近接型」の宿泊体験
ウイスキー造りの現場を知ることは、その味わいを深く理解する最短ルートです。蒸留所を訪れた後、その土地の空気感を変えることなくチェックインできる宿は、愛好家にとって理想郷と言えるでしょう。
富士スピードウェイホテル(静岡県)
静岡の豊かな自然に囲まれたこのホテルは、今やジャパニーズウイスキー界で熱狂的な支持を受ける「ガイアフロー静岡蒸留所」と深い繋がりを持っています。ここでは、ホテル専用にボトリングされたプライベートカスクガイアフロー シングルモルトを味わえるのが最大の魅力です。サーキットの熱気と、静かに熟成の時を待つウイスキーのコントラストが、旅のアクセントになります。
萌木の村 ホテル ハット・ウォールデン(山梨県)
サントリー白州蒸留所からほど近い、八ヶ岳の森にひっそりと佇むホテルです。特筆すべきは館内の「Bar Perch(パーチ)」。ここは日本を代表するウイスキーバーの一つとして知られ、ヴィンテージのサントリー 白州や、入手困難なイチローズモルトが驚くほど充実しています。暖炉の火を眺めながら、森の香りを纏った一杯を嗜む時間は、まさに大人の休日です。
ホテルメトロポリタン仙台(宮城県)
「杜の都」仙台を代表するこのホテルは、ニッカウヰスキー宮城峡蒸留所への拠点として最適です。メインバー「ナイト」では、宮城峡の異なるカスクタイプを飲み比べできるセットが用意されていることも。蒸留所で学んだばかりの知識を、プロのバーテンダーとの会話で深める。そんな贅沢な使い方ができる一軒です。
都市の夜景と希少なボトルに酔いしれるラグジュアリー
都会の喧騒を眼下に見下ろしながら、重厚な革張りのソファに身を沈める。東京をはじめとする都市部の高級ホテルには、世界中からコレクターが集うほどの「お宝ボトル」が眠っています。
マンダリン オリエンタル 東京(東京都・日本橋)
日本橋の空高くに位置するこのホテルは、世界的な人気を誇る秩父蒸留所とのコラボレーションで有名です。ホテル限定のイチローズモルト プライベートカスクが提供されており、ここでしか出会えない複雑な香味を楽しむことができます。37階のマンダリンバーで、宝石のような夜景と共に味わう一杯は、記念日にもふさわしい特別感があります。
パークホテル東京(東京都・汐留)
ウイスキー通なら一度は訪れたいのが、こちらの「ザ・ソサエティ」です。世界最大のウイスキー会員組織「ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(SMWS)」のパートナーバーとなっており、会員でなくても希少なシングルカスクを堪能できます。ラベルに蒸留所名が書かれていない独自のスタイルで、純粋に「味」と向き合うストイックな体験が可能です。
東京ステーションホテル(東京都・丸の内)
歴史ある駅舎の中に位置するバー「オーク」は、静謐な時間が流れる聖域です。ここには、今や世界的に価格が高騰しているサントリー 山崎やサントリー 響のヴィンテージボトルが大切に保管されています。歴史の重みを感じる空間で、伝説的なバーテンダーが作るハイボールやカクテルを味わう。まさに、時計の針を止めて楽しみたい場所です。
独自のこだわりが光る「コンセプト宿」で新しい発見を
単にウイスキーを置いているだけでなく、独自のスタイルでその魅力を発信している宿も増えています。新しいペアリングや、製造の裏側に触れる体験が待っています。
シャトレーゼホテル 旅館 富士野屋(山梨県)
お菓子メーカーとして有名なシャトレーゼですが、実は自社で「山梨蒸溜所」を運営しています。この旅館では、自社製ウイスキーとシャトレーゼ特製のスイーツを合わせるなど、意外なマリアージュを楽しむことができます。温泉で体を癒した後に、甘いものとウイスキーで締める。そんな「自分へのご褒美」が叶う宿です。
琵琶湖ホテル(滋賀県)
近畿圏で注目したいのが、滋賀県の長濱蒸留所との連携です。琵琶湖を望む開放的なロケーションで、長濱 アマハガンシリーズを楽しむことができます。地元の食材を活かした料理と、滋賀の風土が育んだウイスキー。土地のエネルギーを丸ごと取り込むような、豊かな食体験が可能です。
ウイスキーを楽しむホテル選びで失敗しないためのポイント
ウイスキーを目的に宿泊する際、より充実した時間を過ごすためのちょっとしたコツがあります。
- バーの営業時間を事前にチェックする地方のホテルや小規模な宿の場合、バーの定休日やラストオーダーが早いことがあります。「チェックイン後にゆっくり飲もうと思っていたのに閉まっていた」という悲劇を避けるため、事前の確認は必須です。
- 宿泊者限定プランを活用する「ウイスキー1杯付きプラン」や、ミニバーに特別なボトルが入ったプランが用意されていることがあります。個別に注文するよりお得なだけでなく、ホテルがその時期に最もおすすめする銘柄に出会える可能性が高いです。
- ハーフショットの相談をしてみる希少なボトルは、1杯の価格が数万円になることもあります。「いろいろな種類を少しずつ試したい」という場合は、ハーフショットでの提供が可能か聞いてみましょう。多くの専門的なバーでは、快く応じてくれるはずです。
まとめ:ウイスキー ホテルで自分だけの物語を綴る
ウイスキーは、その一杯が作られるまでに何年、何十年という歳月を必要とします。そんな時間の結晶を味わう旅は、忙しない日常を忘れさせてくれる最高のセラピーです。
今回ご紹介した宿は、どこも作り手の情熱と、それを提供するプロフェッショナルの誇りに満ちています。窓の外に広がる景色、グラスの中で溶ける氷の音、そして鼻に抜ける芳醇な香り。五感のすべてを使ってウイスキーと向き合う時間は、あなたの人生に新しい彩りを添えてくれるでしょう。
次の週末は、お気に入りの本を一冊持って、憧れのウイスキー ホテルへ出かけてみませんか。そこには、まだ見ぬ琥珀色の物語が待っています。

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