バーのカウンターで、緑色のボトルに大きな数字が書かれた不思議なウイスキーを見かけたことはありませんか?「29.234」や「33.143」といった、まるで暗号のようなラベル。これこそが、世界中の愛好家を虜にする「ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ(SMWS)」のボトルです。
今回は、知っているようで知らない「ウイスキーソサエティ番号」の仕組みから、主要な蒸留所コードの一覧、そしてボトル選びに失敗しないためのコツまでを徹底解説します。この記事を読めば、次回のバータイムがもっと楽しくなるはずです。
なぜ名前を隠して「番号」で呼ぶのか?
ウイスキーソサエティの最大の特徴は、ラベルに蒸留所名をデカデカと書かないことです。その代わりに、独自の「ウイスキーソサエティ番号」が割り振られています。
なぜこんな面倒なことをするのでしょうか?それは「ブランド名という先入観を捨てて、目の前の一杯と真剣に向き合ってほしい」という、ソサエティ創設時からの強いこだわりがあるからです。
「マッカランだから美味しいはずだ」「無名の蒸留所だから期待できない」といったバイアスを排除し、自分の鼻と舌だけでウイスキーの個性を探る。この知的で贅沢な遊びこそが、ソサエティ最大の魅力なのです。
ウイスキーソサエティ番号の読み方をマスターしよう
ボトルの中心にある数字、例えば「1.234」という表記には明確なルールがあります。
ドットの左側は「蒸留所コード」
最初の数字(例では「1」)は、ソサエティがその蒸留所からカスク(樽)を買い付けた順番を表す「蒸留所コード」です。1番はスペイサイドの名門、グレンファークラス。以降、登録順に数字が増えていきます。
ドットの右側は「樽の通算番号」
後半の数字(例では「234」)は、その蒸留所においてソサエティがボトリングした通算の樽番号です。つまり「1.234」は、「グレンファークラス蒸留所の、ソサエティにおける234番目の樽」という意味になります。
この番号の仕組みを知るだけで、目の前のボトルがどれほど希少なものか、あるいはその蒸留所がソサエティとどれだけ長い付き合いがあるのかが透けて見えてきます。
主要な蒸留所コード一覧(スコッチ編)
それでは、皆さんがよく見かけるであろう主要な蒸留所コードをチェックしていきましょう。お気に入りの蒸留所が何番か、ぜひ探してみてください。
- 1:グレンファークラス
- 3:ボウモア
- 4:ハイランドパーク
- 10:ブナハーブン
- 24:マッカラン
- 26:クライヌリッシュ
- 29:ラフロイグ
- 33:アードベッグ
- 53:カリラ
- 59:ティーニニック
- 76:モートラック
- 105:タリスカー
アイラモルト好きなら「29(ラフロイグ)」や「33(アードベッグ)」、「53(カリラ)」は覚えておいて損はありません。また、ウイスキー グラスを用意して、これらの番号を比較試飲するのも通な楽しみ方です。
日本の蒸留所も!ジャパニーズウイスキーのコード
世界的なジャパニーズウイスキーブームを受け、日本の蒸留所もソサエティのラインナップに加わっています。これらは非常に人気が高く、リリースされるとすぐに完売してしまうことでも有名です。
- 116:余市(ニッカウヰスキー)
- 119:山崎(サントリー)
- 120:白州(サントリー)
- 124:宮城峡(ニッカウヰスキー)
- 130:秩父(ベンチャーウイスキー)
- 131:羽生
- 132:軽井沢
日本のウイスキーは110番台以降に集中しています。特に山崎 ウイスキーなどの原酒がシングルカスク・カスクストレングスで味わえるのは、ソサエティならではの特権と言えるでしょう。
ウイスキー以外の「アルファベット」コード
最近ではウイスキー以外のスピリッツも登場しており、数字の前にアルファベットがついている場合があります。
- G:グレーンウイスキー(例:G1 ノースブリティッシュ)
- B:バーボン(例:B1 ヘヴンヒル)
- R:ラム(例:R1 モニマスク)
- C:コニャック
- A:アルマニャック
- GN:ジン
これらもすべて、ソサエティ独自の厳しい選定基準をクリアした逸品ばかりです。
色で見分ける「12のフレーバープロフィール」
番号だけではどんな味か想像がつかない…という方のために、ソサエティはラベルの色とアイコンで味わいを分類しています。これを「フレーバープロフィール」と呼びます。
例えば、真っ赤なラベルは「Deep, Rich & Dried Fruits(深く豊潤、ドライフルーツ)」。シェリー樽由来の濃厚な甘みが期待できます。一方で、薄い水色は「Light & Delicate(軽やかで繊細)」、濃い緑色は「Heavily Peated(ヘビーなピート)」といった具合です。
番号を調べる前に、まずこの「色」を見て自分の好みの系統かどうかを判断するのが、スマートなボトル選びのコツです。
ソサエティのボトルをより深く楽しむために
ソサエティのボトルは、すべてが「シングルカスク(一つの樽からのみ)」かつ「カスクストレングス(加水なし)」です。そのため、同じ蒸留所番号であっても、ボトルごとに全く異なる表情を見せます。
もし自宅でじっくり向き合いたいなら、テイスティングノートを手元に置いて、感じた香りを言語化してみるのがおすすめです。ソサエティのボトルには、プロのテイスターによるユニークなタイトル(例:「夏の庭でピクニック」など)が付いていますが、それに捉われずに自分の感覚を信じることが大切です。
また、高いアルコール度数を和らげ、香りを一気に開かせるためにスポイトで一滴だけ加水するのも、ソサエティ会員がよく行うテクニックの一つです。
入会すべき?会員になるメリットとは
ウイスキーソサエティは会員制のクラブです。会員になると、以下のような特典があります。
- 会員限定ボトルの購入権
- 世界中のソサエティ会員専用ラウンジの利用
- 会報誌の購読
- パートナーバーでの割引や限定メニュー
もちろん、会員にならなくても「パートナーバー」へ行けば、ソサエティのボトルを飲むことができます。まずはバーで何種類か試してみて、その哲学に共感できたら入会を検討するのが良いでしょう。
ウイスキーソサエティ番号の魅力を再発見しよう
ウイスキーの世界は奥深く、ブランド名やヴィンテージだけで語り尽くせるものではありません。ソサエティが提示する「番号」というシステムは、私たちに「自分の感覚で選ぶ自由」を教えてくれます。
最初は番号を調べるのが楽しくて、ついつい正解探しをしてしまうかもしれません。しかし、何度か経験を積むうちに、「番号はあくまで記号。中身こそが真実」という境地に達するはずです。
まとめ:ウイスキーソサエティ番号で広がる新しい世界
今回は、ウイスキーソサエティ番号の仕組みから、主要な蒸留所コードの意味、そしてフレーバープロフィールの見方までを解説しました。
- ドットの左は蒸留所、右は樽の番号
- ブランドへの先入観を捨てるためのシステム
- ラベルの色(フレーバープロフィール)が味のガイドライン
- 100番台には日本の有名蒸留所も名を連ねる
次にバーで緑色のボトルを見かけたら、ぜひその番号を眺めてみてください。そして、スマホで正解を検索する前に、まずは一口飲んで、その液体が語りかけてくるストーリーに耳を傾けてみませんか?
その番号の裏に隠された蒸留所の歴史や、樽の中で眠っていた長い年月に思いを馳せる。それこそが、ウイスキーソサエティ番号を知った者だけが味わえる、最高に贅沢な大人の遊びなのです。

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