「深海魚」と聞くと、あなたはどんな姿を想像しますか?
暗い海の底で光っていたり、ギョロリとした大きな目をしていたり、あるいは少しグロテスクな見た目を想像して「食べるのはちょっと……」と尻込みしてしまう方も多いかもしれません。
でも、実はそれ、ものすごくもったいないことなんです。
実は、グルメな人たちの間で「一度食べたら忘れられない」と言われるほど評価が高いのが深海魚。一度口にすれば、その驚くほど濃厚な脂の乗りと、上品な白身の旨味にきっと衝撃を受けるはずです。
今回は、深海魚がなぜこれほどまでに美味しいのかという秘密から、絶対に食べてほしいおすすめの種類、そして家庭や現地で楽しむための最高の食べ方まで、その魅力を余すところなくお届けします。
なぜ「深海魚」はこれほどまでに美味しいのか?
そもそも、なぜ水深200メートルを超えるような過酷な環境に住む魚たちが、これほどまでに美味しいのでしょうか。その最大の理由は、彼らが生き抜くために備えた「脂」にあります。
深海は非常に水圧が高く、温度も低い世界です。通常の魚は「浮き袋」の中に空気を入れて浮力を調整しますが、深海で空気を溜め込もうとすると水圧で押し潰されてしまいます。そこで多くの深海魚は、空気の代わりに「脂(油)」を体に蓄えることで、水に浮く力を得ているのです。
つまり、彼らにとって脂は、過酷な環境で浮き上がるための天然のフローター。だからこそ、マグロのトロにも引けを取らないほどの濃厚な脂が、全身に回っている種類が多いのです。
また、深海はエサが極端に少ない環境です。いつ次の食事にありつけるかわからないため、摂取した栄養を効率よく体に貯め込む性質があります。この「蓄える力」が、わたしたち人間にとっては「濃厚な旨味」として感じられるというわけですね。
さらに、激しく泳ぎ回る必要がないため、身質が非常に柔らかいのも特徴です。ゼラチン質が豊富で、口の中でとろけるような食感を楽しめる魚が多いのも、深海魚ならではの魅力と言えるでしょう。
美味しい深海魚の筆頭!絶対に外せない人気種
さて、ここからは具体的に「どの深海魚が美味しいのか」について、代表的な種類をご紹介していきます。
キンメダイ:深海の赤い宝石
深海魚の代表格といえば、やはりキンメダイです。鮮やかな赤色と大きな金色の目は、お祝いの席にもぴったりですよね。
キンメダイは一年中脂がのっていますが、特に冬場は「とろけるような甘み」が強まります。定番の煮付けはもちろん、新鮮なものならお刺身やしゃぶしゃぶで、その上品な脂の甘さをダイレクトに味わってみてください。
キンメダイをお取り寄せして自宅で楽しむなら、調理器具もこだわりたいところです。雪平鍋があれば、ふっくらとした煮付けを誰でも簡単に作ることができますよ。
メヒカリ(トロボッチ):止まらない美味しさ
最近、居酒屋やスーパーでも見かけるようになったのがメヒカリ。地方によっては「トロボッチ」とも呼ばれています。
この魚の魅力は何と言っても、その「ふわふわ感」です。皮が非常に薄く、身にはたっぷりと脂が含まれているため、唐揚げや天ぷらにすると外はサクサク、中はジュワッと脂が溢れ出します。
骨も柔らかいので、丸ごと食べられるのも嬉しいポイント。お子様からお年寄りまで、誰にでも愛される深海魚の優等生です。
アカムツ(ノドグロ):白身のトロと称される最高級魚
「ノドグロ」の名で知られるアカムツも、実は水深100〜200メートル付近に生息する深海魚の仲間です。
その味わいはまさに「白身のトロ」。口に入れた瞬間に広がる濃厚な脂の旨味は、他の魚では決して味わえない特別感があります。塩焼きにして、皮目からじゅわじゅわと溢れ出す脂を楽しみながら食べるのが最高に贅沢な過ごし方です。
見た目に惑わされないで!驚きの絶品深海魚たち
深海魚の中には、見た目は少し個性的(?)でも、食べると驚くほど美味しい「隠れた名品」がたくさん存在します。
ゲホウ(トウジン):見た目からは想像できない高貴な味
「ゲホウ」という名前を聞いたことがありますか? 鼻先が鋭く尖り、ネズミのような顔をした不思議な魚です。見た目は少し不気味に感じるかもしれませんが、その身質は超一級品。
特に刺身は、甘みが強く非常にモチモチとした食感です。さらに、この魚の最大の楽しみは「肝」にあります。カワハギのように、新鮮な肝を醤油に溶いて刺身に絡めて食べる「肝醤油」は、まさに悶絶級の美味しさです。
アブラボウズ:全身が脂の塊!禁断の旨味
その名の通り、体の約4割が脂と言われるのがアブラボウズ。見た目は巨大で黒っぽく、迫力満点です。
身は真っ白で、火を通すとホロホロと崩れる柔らかさ。西京焼きや煮付けにすると、味噌の塩気と脂の甘みが絶妙にマッチします。ただし、脂が強すぎるため、一度にたくさん食べすぎるとお腹がびっくりしてしまうこともあるので、少しずつ大切に味わうのがコツですよ。
ゲンゲ:プルプルのコラーゲン爆弾
北陸地方などで親しまれている「ゲンゲ」。かつては「下の下(げのげ)」と言われ、漁師さんたちが捨てていた時代もありましたが、今ではその美味しさが見直されています。
全身が透明なゼラチン質に包まれており、食感はプルップル。お吸い物や天ぷらにすると、口の中で溶けてなくなってしまうような不思議な感覚を味わえます。コラーゲンたっぷりなので、美容を気にする方にもおすすめしたい深海魚です。
深海魚を最高に美味しく食べるためのコツ
せっかく美味しい深海魚を手に入れたなら、そのポテンシャルを最大限に引き出す食べ方を知っておきたいですよね。
お刺身は「炙り」が正解
脂の乗りが良い深海魚をお刺身で食べるなら、ぜひ「炙り」を試してみてください。表面をサッと火で炙ることで、皮の下にある脂が溶け出し、香ばしさが加わります。
クッキングバーナーが一本あれば、自宅でも簡単に本格的な炙り刺身が楽しめます。塩とレモンだけで食べると、脂の甘みがより一層引き立ちます。
煮付けは「濃いめの味付け」で
脂が強い魚は、甘辛い濃いめの味付けによく合います。醤油、砂糖、みりん、そして生姜をたっぷり効かせて煮込むことで、脂のしつこさが消え、旨味だけがギュッと凝縮されます。
天ぷらや唐揚げは「高温で一気に」
メヒカリやゲンゲなどの身が柔らかい魚は、水分を多く含んでいます。そのため、低温でじっくり揚げるとベチャッとしがちです。
衣を薄くつけ、高温の油でサッと揚げることで、外はカリッと、中は深海魚特有の「ふわっ、トロッ」とした食感をキープできます。揚げたてにパラリと塩を振って、熱いうちに頬張るのが正解です。
聖地で味わう!深海魚グルメ旅のススメ
もし、本当に新鮮で多種多様な深海魚を食べてみたいと思ったら、ぜひ「深海魚の聖地」へ足を運んでみてください。
もっとも有名なのが、静岡県沼津市にある「戸田(へだ)」地区です。駿河湾は日本で最も深い湾であり、ここでは古くからトロール漁(底引き網漁)が盛んに行われてきました。
戸田の食堂では、その日に獲れたばかりの珍しい深海魚がずらりと並びます。他ではまずお目にかかれない「タカアシガニ」や、濃厚な甘みが特徴の「アカザエビ(手長エビ)」など、深海魚ファンにはたまらないラインナップが楽しめます。
また、愛知県の蒲郡市もメヒカリをはじめとする深海魚の宝庫として知られています。地元のスーパーに普通に深海魚が並んでいる光景は、都会の人から見れば驚きの連続かもしれません。
旅の思い出を綺麗に残すなら、ミラーレス一眼をバッグに忍ばせておくのもいいですね。鮮やかな赤いキンメダイや、迫力満点の深海魚料理は、写真映えも抜群です。
深海魚の美味しさを守るために知っておきたいこと
わたしたちが美味しい深海魚を楽しみ続けるためには、少しだけ知っておかなければならないことがあります。
それは、深海魚は成長が非常に遅い種類が多いということです。一度獲りすぎてしまうと、数が回復するまでに長い時間がかかります。そのため、産地では漁獲制限を設けたり、小さな魚は海に戻したりといった資源保護の取り組みが行われています。
「美味しい」と感じるだけでなく、その命が育まれる壮大な時間の流れに感謝しながらいただく。そんな気持ちを持つことが、深海魚という素晴らしい食文化を次世代に繋いでいく第一歩になるはずです。
美味しい深海魚おすすめ10選!脂がのった絶品の種類や驚きの食べ方を徹底解説
ここまで、深海魚がいかに魅力的で、そして美味しいかについて詳しくご紹介してきました。
振り返ってみると、深海という過酷な世界を生き抜くために彼らが手に入れた「脂」こそが、わたしたちを虜にする美味しさの正体だったことがわかります。
- 王道の「キンメダイ」や「アカムツ(ノドグロ)」
- ふわふわ食感がたまらない「メヒカリ」
- 見た目とは裏腹に上品な「ゲホウ」や「アブラボウズ」
- ゼラチン質の塊「ゲンゲ」
どの魚も、一般的な浅瀬の魚では味わえない独特の風味と満足感を与えてくれます。
もしあなたが次に魚料理を選ぶ機会があったら、ぜひ「深海魚」という選択肢を思い出してみてください。お取り寄せで楽しむもよし、産地へ旅をして獲れたてを味わうもよし。その一口が、あなたの魚に対する価値観をガラリと変えてしまうかもしれません。
一度その脂の甘みを知ってしまったら、もう普通の魚には戻れなくなる……。そんな「深海魚沼」へ、あなたも一歩足を踏み入れてみませんか?
美味しい深海魚の世界は、今も深い海の底で、あなたがその価値を見つけてくれるのを静かに待っています。

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