「名古屋のソウルフード」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは何でしょうか?ひつまぶし、手羽先、味噌カツ……。魅力的な名古屋メシはたくさんありますが、実は地元の人から最も愛され、日常に溶け込んでいるのは「きしめん」かもしれません。
でも、意外と「きしめんって、ただの平たいうどんでしょ?」と思っている方も多いはず。それは非常にもったいない!きしめんには、うどんにはない独特ののどごし、出汁の深み、そして奥深い歴史が詰まっています。
今回は、食べ歩き好きも唸る美味しいきしめんの選び方から、絶対に外さない名店、そして自宅で楽しめる至高のレシピまで、その魅力を余すことなくお届けします。
きしめんとうどんは何が違う?知っておきたい「薄さ」の秘密
そもそも、きしめんとうどんは何が違うのでしょうか。実は、日本農林規格(JAS規格)によって明確な基準が設けられています。乾麺の場合、幅が4.5mm以上、かつ厚さが2.0mm未満であるものが「きしめん」と定義されています。
この「薄さ」こそが、美味しさの最大のポイントです。うどんは「コシ」や「噛み応え」を楽しみますが、きしめんは「のどごし」と「つゆの絡み」を楽しむもの。表面が滑らかで、ツルリと喉を通る感覚は、一度ハマると病みつきになります。
また、名古屋の伝統的なきしめんは、小麦粉と塩水だけで打たれるシンプルさが命です。職人がその日の気温や湿度に合わせて水分量を微調整することで、あの絶妙な弾力と透明感が生まれるのです。
出汁の決め手は「ムロアジ」!名古屋流の深いコクを味わう
美味しいきしめんを語る上で欠かせないのが、その個性的な「つゆ」です。一般的な関西風のうどん出汁が昆布と鰹節をベースにするのに対し、名古屋のきしめんは「ムロアジ」から取った節をメインに使います。
ムロアジの節は、鰹節よりも脂質が多く、どっしりとしたコクと独特の渋みが特徴です。この力強い出汁に、愛知県特産の「たまり醤油」を合わせることで、あの真っ黒で濃厚な「赤つゆ」が完成します。
見た目の濃さに驚くかもしれませんが、一口飲んでみると、見た目ほど塩辛くはありません。むしろ、ムロアジの旨味とたまり醤油の甘みが一体となった、重厚でまろやかな味わいに驚くはずです。最近では、白醤油を使った上品な「白つゆ」を出すお店も増えており、好みに合わせて選べるようになっています。
名古屋駅で出会う伝説の味から老舗まで!厳選おすすめ店10選
名古屋を訪れたら必ず足を運びたい、本当におすすめできるお店をご紹介します。
1. きしめん 住よし(JR名古屋駅ホーム)
「わざわざ入場券を買ってまで食べる価値がある」と言われる有名店です。新幹線のホームで漂う出汁の香りに誘われた経験がある方も多いはず。注文を受けてから揚げる天ぷらと、やや濃いめのつゆが、出張帰りの体に染み渡ります。
2. 総本家えびすや(中区・錦)
創業から変わらぬ手打ちにこだわる老舗です。ここの麺は、きしめんの概念を覆すほどの「もっちり感」があります。特製のアロマのような出汁の香りは、一度体験すると忘れられません。
3. 吉田麺業(名古屋駅・エスカ)
製麺所が直営するお店だからこそ、麺の鮮度が抜群です。保存料を一切使わない、小麦本来の風味が生きている麺が自慢。お土産用の販売も充実しているので、食べた帰りに購入するのもおすすめです。
4. 星が丘製麺所(千種区・星が丘テラス)
きしめんのイメージをガラリと変えた進化系。カフェのようなおしゃれな空間で、自分好みのトッピングや麺の種類を選べます。こちらの冷凍きしめんのような、高品質な冷凍技術を駆使した麺は、驚くほどの透明感です。
5. 川井屋本店(東区・飯田町)
「コシのあるきしめんが食べたい」ならここ。熟成された麺は、薄いのにしっかりと押し返すような弾力があります。地元の人々が長年通い続ける、信頼の一軒です。
6. 宮きしめん(熱田区・熱田神宮)
熱田神宮の境内で、緑に囲まれながら食べるきしめんは格別。名古屋を代表するブランドとして知られ、観光客にも絶大な人気を誇ります。
7. 芳乃家(昭和区・桜山)
こちらの特徴は、なんといってもその「幅の広さ」。口いっぱいに広がる麺の食感はインパクト絶大。濃厚なカレーきしめんも絶品で、リピーターが絶えません。
8. 角丸(東区・泉)
「味噌煮込みきしめん」という贅沢な組み合わせが楽しめる名店。味噌のコクに負けない、しっかりとした麺の存在感が光ります。
9. 手打うどん かとう(中村区・太閤通)
うどんの有名店ですが、ここで提供される「きしころ(冷やしきしめん)」の完成度は芸術的。ツヤツヤと輝く麺の美しさに、誰もが目を奪われます。
10. 面処 市(中区・丸の内)
ビジネス街で愛される、出汁のバランスが最高なお店。シンプルだからこそ、素材の良さが際立つ「かけきしめん」をぜひ試してみてください。
自宅で究極の1杯を作る!プロ直伝の茹で方とレシピ
お店の味が恋しくなっても、近くに店舗がない場合は自宅で作りましょう。最近では、スーパーでも手軽に買えますし、ネット通販で乾麺を取り寄せることも可能です。
1. 麺を茹でる時の黄金ルール
きしめんは薄いため、うどんよりも茹で時間の管理がシビアです。
- 大きな鍋でたっぷりのお湯を沸かす。
- 差し水(びっくり水)はせず、火加減で調整する。
- 表示時間の30秒前に一度硬さをチェック。
- 茹で上がったらすぐに氷水で「締める」。
この「締める」工程が、表面のヌメリを取り、きしめん特有のツルツルしたのどごしを生みます。温かい麺で食べる場合も、一度締めてからお湯にくぐらせて温め直すのがプロの技です。
2. 絶品「ころ(香露)」の作り方
名古屋独自の冷やしスタイル「ころ」。冷たいつゆを少量かけ、薬味でシンプルに味わう方法です。
- 茹でて締めた麺を丼に盛る。
- 冷たく冷やした濃いめの出汁(白だしでも可)を注ぐ。
- ほうれん草、油揚げ、そして山盛りの「花かつお」を乗せる。
- お好みでおろし生姜やワサビを添える。
花かつおは、食べる直前に乗せることで、熱や湿気で香りが立ち、きしめんの美味しさを数倍に引き上げてくれます。
シチュエーション別!失敗しないきしめんの選び方
贈り物や自分へのご褒美にきしめんを買う際、何を選べばいいか迷いますよね。用途に合わせた選び方のポイントを整理しました。
- 贈答用なら「乾麺」賞味期限が長く、保管もしやすいため、ギフトに最適です。特に老舗の化粧箱入りは、名古屋の格式高いお土産として喜ばれます。
- 自宅で手軽に楽しむなら「半生麺」乾麺よりも茹で時間が短く、モチモチとした食感がより強く残ります。週末のちょっと贅沢なランチにぴったりです。
- 時短重視なら「冷凍麺」最近のカトキチ きしめんなどの冷凍技術は目を見張るものがあります。レンジ調理ができるタイプもあり、忙しい日の夕食にも強い味方です。
- 健康志向なら「全粒粉入り」最近では小麦の栄養を丸ごと摂れる全粒粉入りのきしめんも登場しています。香ばしい風味が強く、くるみダレなど濃厚なソースによく合います。
意外な組み合わせ?きしめんの新しい楽しみ方
伝統的な食べ方も素敵ですが、平たい麺という特徴を活かしたアレンジも人気です。
例えば、パスタの代わりに使う「きしめんパスタ」。クリーム系のソースやカルボナーラにすると、フェットチーネのような感覚で楽しめます。麺が薄い分、ソースがよく絡み、パスタとは違った柔らかな口当たりが新鮮です。
また、冬場は「きしめんグラタン」もおすすめ。茹でたきしめんをホワイトソースと和えて、チーズを乗せて焼くだけ。マカロニよりもボリューム感があり、お子様にも喜ばれるメニューになります。
さらに、キャンプなどのアウトドアシーンでも重宝します。うどんよりも火の通りが早いため、お鍋の締めに入れるのに最適です。
美味しいきしめんで心もお腹も満たされる幸せ
いかがでしたか?きしめんは、そのシンプルな見た目の中に、名古屋の歴史と職人のこだわりが凝縮された素晴らしい食文化です。
これまで「なんとなく」で選んでいた方も、麺の厚さやつゆの出汁、さらには「ころ」といった独特の食べ方に注目してみるだけで、その世界がぐっと広がるはずです。
名古屋を訪れた際は、ぜひ今回ご紹介したお店を巡ってみてください。そして自宅でも、お気に入りの麺を見つけて、自分だけの最高の一杯を追求してみてはいかがでしょうか。
ツルリとしたのどごしと、豊かな出汁の香り。美味しいきしめんがあれば、いつもの食卓がちょっと特別で、豊かな時間へと変わるはずですよ。

コメント