ジャパニーズウイスキーの世界で今、最も熱い視線を浴びている蒸溜所をご存知でしょうか?北海道の東部、霧に包まれた湿原の町で造られる「厚岸蒸溜所」です。
特に、日本の豊かな四季をウイスキーで表現した「二十四節気シリーズ」は、新作が発表されるたびに争奪戦が繰り広げられるほどの人気を誇ります。
「厚岸のウイスキーって何がそんなに凄いの?」「全種類の特徴を知りたい」「どうすれば定価で買える?」
そんな疑問を抱えている方のために、今回は厚岸蒸溜所のこだわりから、歴代シリーズの味わい、そして賢い入手方法まで、愛好家の視点で詳しく紐解いていきます。
聖地アイラ島を目指した厚岸蒸溜所の情熱
厚岸蒸溜所がウイスキー造りを開始したのは2016年のこと。オーナーである樋田恵一氏が「スコットランドのアイラ島のような、スモーキーで潮風香るウイスキーを日本で造りたい」という強い想いから、気候条件が酷似した北海道厚岸町を選びました。
厚岸は夏でも涼しく、海からの霧が立ち込める湿潤な環境です。この「霧」こそが熟成において極めて重要な役割を果たします。樽が呼吸する際に、厚岸のピート(泥炭)を含んだ湿原の空気や、海からの潮風をたっぷりと吸い込むことで、他のジャパニーズウイスキーにはない独特の「潮感」が生まれるのです。
また、厚岸蒸溜所は原材料へのこだわりも徹底しています。一部の銘柄では厚岸産のミズナラ樽を使用したり、地元産の麦芽やピートを活用したりと、「厚岸オールスター」なウイスキー造りを目指している点も、ファンを惹きつけてやまない理由の一つです。
厚岸 ウイスキー 24 節気シリーズとは何か?
2020年からスタートしたこのシリーズは、1年を24の季節に分ける「二十四節気」の名を冠した限定ボトルです。およそ3ヶ月に一度のペースでリリースされており、その季節の情景を味と香りで表現しています。
このシリーズの面白いところは、回を追うごとに「熟成が進んでいる」という点です。初期のリリースは3年熟成程度のフレッシュな原酒が主体でしたが、回を重ねるごとに原酒が深みを増し、ブレンディング技術も進化しています。
シリーズは大きく分けて2つのラインナップが存在します。
- シングルモルト: 厚岸蒸溜所の原酒のみを使用したもの。蒸溜所の個性がダイレクトに伝わります。
- ブレンデッド: 厚岸のモルト原酒に、輸入したグレーン原酒をブレンドしたもの(または厚岸産グレーンを含むもの)。非常にバランスが良く、初心者にも親しみやすい仕上がりです。
歴代ラインナップの味わいと特徴を振り返る
これまでに登場した主な銘柄を、その味わいの傾向とともに見ていきましょう。
第1弾:寒露(かんろ)
記念すべきシリーズ第1号はシングルモルトでした。イチゴやドライフルーツのような甘みの中に、ガツンとくる力強いピート。まさに「厚岸伝説」の幕開けにふさわしい、衝撃的な一本です。
第2弾:雨水(うすい)
シリーズ初のブレンデッド。厚岸モルトの比率が非常に高く、カカオのようなビターな甘みと、厚岸らしい潮の香りが見事に調和しています。ハイボールにすると化ける銘柄として今でも語り草になっています。
第3弾:芒種(ぼうしゅ)
シングルモルト。ミズナラ樽由来のオリエンタルな香りが特徴的。柑橘系の爽やかさと、焚き火の後のようなスモーキーさのバランスが絶妙です。
第5弾:立冬(りっとう)
冬の始まりを告げるシングルモルト。シェリー樽由来の濃厚なチョコレートやレーズンのような甘みが、冷え込む季節にぴったりの重厚感を与えてくれます。
第12弾:白露(はくろ)
シングルモルト。このあたりから原酒の熟成感が一段と増してきました。和菓子のような上品な甘みと、厚岸独特の力強いスモークが同居する、非常に完成度の高い一本です。
第16弾:小暑(しょうしょ)
シングルモルト。バナナジュースのような濃厚なフルーツ感と、後味に感じる出汁醤油のような旨味。厚岸のポテンシャルの広さを感じさせる驚きの一本でした。
最新作:冬至(とうじ)や小寒(しょうかん)
近年のリリースでは、グレーン原酒との馴染みがさらに良くなったブレンデッドや、よりピーティーさを強調したシングルモルトなど、リリースごとに異なる表情を見せてくれます。
気になる評価:なぜ「まずい」という声があるのか?
ネットで検索すると、稀に「厚岸ウイスキーはまずい」という極端な意見を目にすることがあります。しかし、これは品質の問題ではなく、その「強烈な個性」ゆえのミスマッチと言えるでしょう。
- ピートの強さ: 厚岸はアイラモルトを意識しているため、煙臭さや薬品のような香りが強い傾向にあります。フルーティーで軽やかなウイスキーを好む方には、少し刺激が強すぎるのかもしれません。
- 若さゆえのアルコール感: 初期ボトルは熟成年数が短かったため、アルコールのツンとした刺激を感じる場合がありました。しかし、現在のリリースではこの点は劇的に改善されています。
- 潮味(しおみ)の独特さ: 後味に残る塩気が、飲み慣れない人には違和感として映ることがあります。
逆に言えば、ラフロイグやアードベッグといったアイラモルトが好きな方にとって、厚岸は「日本で最も待ち望んでいた味」と言っても過言ではありません。
定価と市場価格、そして入手するための戦略
厚岸ウイスキーを手に取る上で最大の壁となるのが、その希少性です。
定価の目安
- シングルモルト:約19,800円(税込)
- ブレンデッド:約13,200円(税込)※リリース時期や酒税の関係で多少前後します。
市場価格の現状
残念ながら、酒販店の店頭で見かけることは稀で、多くはプレミア価格で取引されています。特に第1弾の「寒露」などは、定価の数倍から10倍近い価格で並ぶことも珍しくありません。
定価で手に入れるための3つのルート
- 特約店での抽選販売: 地元の有力な酒屋さんが厚岸蒸溜所の特約店になっている場合があります。まずは近所のプロショップに通い、入荷情報をチェックしましょう。
- 百貨店のオンライン・店頭抽選: 伊勢丹や三越、高島屋などの百貨店では、定期的に抽選販売が行われます。カード会員限定の場合も多いため、チェックは欠かせません。
- 厚岸町へのふるさと納税: 最も確実性が高い方法の一つです。北海道厚岸町への寄付返礼品として、二十四節気シリーズが登場することがあります。
厚岸ウイスキーを最高に美味しく飲む方法
せっかく手に入れた貴重なボトル。そのポテンシャルを最大限に引き出す飲み方をご紹介します。
- まずはストレートで: まずは何も加えず、厚岸の「潮風」を感じてください。グラスは香りが溜まりやすいテイスティンググラスがおすすめです。
- 数滴の加水(トワイスアップ): 少しずつ水を加えると、隠れていたバニラや蜂蜜のような甘みが一気に花開きます。
- 厚岸流ハイボール: ブレンデッドシリーズなら、ぜひハイボールで。強炭酸で割ることで、ピートの香りが爽やかに弾けます。ここでのおすすめは「地元の食材」と合わせること。牡蠣のオイル漬けなど、海の幸をお供にすると、ウイスキーに含まれる塩味が最高の調味料に変わります。
コレクションとしての魅力と注意点
二十四節気シリーズは、ラベルのデザインも秀逸です。日本の伝統色を用いた落ち着いたトーンは、棚に並べておくだけで絵になります。
しかし、コレクションする際には保管環境に注意が必要です。
- 直射日光を避ける: 紫外線は液体の色と味を劣化させます。必ず冷暗所で保管しましょう。
- 立てて保存: ウイスキーは度数が高いため、横に寝かせるとコルクを傷めてしまいます。
- 温度変化を抑える: 夏場の高温は厳禁です。
また、最近では非常に巧妙な偽造品も出回っているようです。オークションサイトなどで購入する場合は、出品者の評価やボトルの細部をしっかり確認するようにしてください。
まとめ:厚岸 ウイスキー 24 節気シリーズが紡ぐ未来
厚岸ウイスキーは、単なるお酒の枠を超え、北海道の風土そのものをボトルに詰め込んだ芸術品のような存在です。
二十四節気シリーズは、まだ道半ば。これからも「大暑」「秋分」「大雪」といった季節の名を冠したボトルが登場し、私たちの五感を刺激してくれることでしょう。年を追うごとに円熟味を増していく原酒の成長を、リアルタイムで追いかけられるのは、今この時代にウイスキーを楽しんでいる私たちの特権です。
もし、どこかのバーや酒販店でこの美しいラベルを見かけたら、迷わずそのチャンスを掴んでください。一口含めば、厚岸の霧深い湿原と、力強い波の音が脳裏に浮かぶはずです。
さあ、あなたも「厚岸 ウイスキー 24 節気」の世界へ足を踏み入れて、日本の四季をグラスの中で旅してみませんか?

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