バーの棚やスーパーのお酒売り場で、ふと目が合う「あのおじさん」。ウイスキーのボトルには、なぜか印象的な男性の絵が描かれていることが多いですよね。
「このヒゲのおじさん、誰なんだろう?」
「ニッカとサントリーのおじさんは何が違うの?」
「モデルになった実在の人物がいるって本当?」
そんな疑問を抱いたことがある方も多いはずです。実は、ラベルに描かれた「おじさん」たちには、そのウイスキーの歴史や情熱、そして遊び心にあふれた深いストーリーが隠されています。
今回は、ウイスキーファンならずとも知っておきたい、有名銘柄の「おじさん」たちの正体を詳しく紐解いていきます。この記事を読み終える頃には、いつもの一杯がもっと味わい深く感じられるはずですよ。
すすきのの象徴!ブラックニッカの「ヒゲのおじさん」の正体
日本のウイスキーシーンで最も有名といっても過言ではないのが、ブラックニッカのラベルに描かれた「ヒゲのおじさん」です。札幌・すすきのの交差点にある巨大な看板でもおなじみですよね。
この方の正式名称は「キング・オブ・ブレンダーズ(ブレンドの王様)」。決して、創業者である竹鶴政孝自身ではありません。
モデルは英国の伝説的ブレンダー
このおじさんのモデルは、19世紀の英国に実在した「W・P・ローリー卿」という人物です。彼はウイスキーの調合(ブレンディング)において類まれなる才能を持ち、まさに「王様」と呼ぶにふさわしい技量を持っていたといわれています。
竹鶴政孝は、ウイスキーの品質を決めるのはブレンドの技術であるという強い信念を持っていました。そのため、「理想のブレンダー」の象徴としてローリー卿をラベルに採用したのです。
手に持っている「道具」に注目
よく見ると、おじさんは右手に小さなグラス、左手に大麦の穂を持っています。これは、ウイスキーの原料である「大麦」への敬意と、出来上がった原酒の香りを確かめる「テイスティング」の重要性を表現しているんです。
ちなみに、ファンの間では「竹鶴政孝本人がモデルだ」と信じられていた時期もありましたが、本人は「わしはあんなに鼻が高くない」と笑って否定していたという微笑ましいエピソードも残っています。
昭和レトロのアイコン!アンクルトリスの哀愁と愛嬌
ニッカと並んで日本のウイスキー文化を支えてきたのが、サントリーのトリスウイスキーです。こちらに登場する「トリスおじさん」こと「アンクルトリス」は、ニッカの威厳ある雰囲気とは対極にあります。
小市民的な親しみやすさ
アンクルトリスが誕生したのは1958年のこと。イラストレーターの柳原良平さんによって生み出されました。2頭身でちょっとトボけた表情、そしてどことなく哀愁漂う姿は、当時のサラリーマンたちの心をがっちりと掴みました。
彼は「小心者だけどお人よし」「時々ちょっと背伸びをしたくなる」という、非常に人間味あふれる設定を持っています。高度経済経済成長期、一生懸命に働く日本のお父さんたちの分身のような存在だったのですね。
時代を超えて愛される理由
一時期は表舞台から姿を消していましたが、近年のハイボールブームに合わせて再登場。現代の若者にとっても、そのレトロでポップなデザインが「かわいい」「エモい」と評判になり、再びお茶の間の人気者となりました。
アンクルトリスのグッズやグラスは、今でもコレクターの間で非常に人気が高く、日本のウイスキー文化における「愛されキャラ」の地位を不動のものにしています。
世界を股にかけるジェントルマン!ジョニーウォーカーの歩み
スコッチウイスキーの代名詞ジョニーウォーカー。このラベルに描かれたステッキを持つ紳士は、世界で最も認知されているロゴの一つでしょう。
始まりはナプキンの裏のスケッチ
この紳士は「ストライディングマン(闊歩する紳士)」と呼ばれています。1908年、当時の有名な風刺漫画家が、創業者ジョン・ウォーカーをイメージして、昼食中のナプキンの裏にサラサラっと描いたスケッチが始まりだといわれています。
当時の流行の先端を行くシルクハット、赤い上着、そしてステッキ。非常にスタイリッシュなその姿は、瞬く間にブランドの象徴となりました。
実は「歩く向き」が変わった?
このストライディングマン、実は歴史の途中で歩く向きが変わったことをご存知でしょうか。かつては左(過去)に向かって歩いていましたが、1999年に「未来へ向かって進む」という意味を込めて、右向きに変更されました。
ブランドのスローガンである「Keep Walking(走り続ける、前進し続ける)」をまさに体現しており、常に進化を続ける姿勢がその「おじさん」の足取りに込められているのです。
152歳まで生きた伝説!オールドパーに秘められた長寿の願い
独特の四角いボトルを斜めに立たせることができるオールドパー。このラベルにも、非常に渋い表情のおじさんが描かれています。
実在したイギリス最高齢の男
彼の正体は、トーマス・パー。愛称を「オールド・トム・パー」といいます。驚くべきことに、彼は152歳まで生きたという伝説を持つ実在の人物です。英国の歴史の中でも長寿の象徴として知られており、あの有名な画家ルーベンスが彼の肖像画を描いたほど。
熟成と永続性のシンボル
なぜウイスキーのラベルに長寿の老人が選ばれたのか。それは、ウイスキーにとって最も大切な「熟成」を象徴するためです。また、ブランドが末永く続くようにという願いも込められています。
ボトルを斜めに傾けて立てることができるデザインも、「倒れない」「右肩上がり」といった縁起の良さを連想させるため、日本の政財界でも長く愛されてきました。
影の立役者!デュワーズを世界へ広めたマーケティングの天才
世界的に人気の高いデュワーズ。こちらのブランドにも、創業家の肖像が深く関わっています。
陽気な宣伝マン、トミー・デュワー
特に注目したいのが、創業者の息子であるトーマス・デュワー(トミー・デュワー)です。彼は非常に機知に富んだ人物で、世界中を旅しながらデュワーズの魅力を広めました。
「ハイボール」という飲み方の普及にも一役買ったといわれる彼は、現代の広告やパッケージでも、その洒脱な紳士のイメージとして受け継がれています。彼のような情熱的な人物がいたからこそ、今のウイスキー文化があるといっても過言ではありません。
なぜウイスキーのラベルには「おじさん」が多いのか?
ここまで様々な「おじさん」を見てきましたが、なぜウイスキーにはこれほどまでに男性の絵や肖像画が使われるのでしょうか。そこには、ウイスキーというお酒が歩んできた歴史的背景があります。
信頼と品質の証
かつてウイスキーが密造酒から脱却し、ブランドとしての地位を確立しようとしていた時代、消費者が最も求めていたのは「安心感」と「品質」でした。
威厳のある紳士や、歴史に名を残す偉人、あるいは熟練の職人の姿をラベルに載せることは、「このお酒は信頼できる人物が責任を持って作っている」「確かな歴史がある」というメッセージになったのです。
ストーリーを語る媒体
また、昔の人はお酒を飲みながらそのラベルに描かれた人物について語り合うことを楽しみました。ラベルの絵は、単なるデザインではなく、酒席を盛り上げるための「話のタネ」でもあったわけです。
現代でも、私たちがこうしておじさんの正体を探りたくなるのは、作り手の仕掛けた戦略に心地よく乗せられているからかもしれませんね。
現代のウイスキーラベルにおけるおじさんたちの役割
最近では、より洗練されたミニマルなデザインや、カラフルで抽象的なラベルも増えてきました。しかし、それでもなお「おじさん」たちは消えることなく、愛され続けています。
ブランドの「擬人化」
今の時代、私たちは単に「味が美味しい」だけでなく、そのブランドがどのような「哲学」を持っているかを重視します。アンクルトリスのように親しみやすいおじさんは、ブランドを身近な友達のように感じさせてくれます。一方で、キング・オブ・ブレンダーズのような厳格なおじさんは、ブランドのこだわりを無言で伝えてくれます。
キャラクターがあることで、私たちはそのウイスキーに対してより強い愛着(ファン心理)を持つようになるのです。
レトロブームとの相性
また、若い世代の間で起こっている「レトロブーム」も追い風になっています。かつて「古い」と感じられていたおじさんの絵が、今では「クラシックでかっこいい」「一周回っておしゃれ」というポジティブな評価に変わっています。
特にサントリー角瓶やトリスなどは、昭和の雰囲気を残しつつ現代的にアレンジすることで、幅広い層から支持を得ることに成功しています。
ウイスキーのラベルに描かれた「おじさん」の正体は?名前の由来やモデルを徹底解説!まとめ
さて、これまで様々なウイスキーのラベルに隠された「おじさん」たちの物語を見てきました。
ニッカの「キング・オブ・ブレンダーズ」が示す品質への誇り。
サントリーの「アンクルトリス」が体現する庶民の安らぎ。
ジョニーウォーカーの「ストライディングマン」が示す前進の精神。
オールドパーの「トーマス・パー」が象徴する時間の重み。
一見するとただの古い絵に見えるかもしれませんが、そこには作り手たちの熱い想いや、その時代の空気感がぎゅっと凝縮されています。次にウイスキーを飲むときは、ぜひボトルのラベルをじっくりと眺めてみてください。
きっと、ラベルの中のおじさんが、ウイスキーの美味しい楽しみ方をこっそり教えてくれるはずですよ。
「このおじさん、実はね……」と誰かに話したくなったら、ぜひこの記事の内容を思い出して、楽しいウイスキータイムを過ごしてくださいね。

コメント