「そろそろ少しいいお酒を家で楽しみたい」「大切な人へのギフトに高級感のある1本を選びたい」そう思って酒屋さんの棚を眺めていると、ふと目に留まるのが「VSOP」という文字ではないでしょうか。
高級感のあるボトルのラベルに誇らしげに記されたその4文字。しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。「あれ、これってウイスキーなの?それともブランデー?」
結論からお伝えすると、ウイスキーに「VSOP」という等級基準は存在しません。もしあなたが「VSOP」と書かれたボトルを手に取っているなら、それは十中八九「ブランデー」です。
なぜウイスキーにはVSOPがないのか、そして私たちがよく目にするサントリー V.S.O.Pなどはどういった立ち位置のお酒なのか。知っているようで意外と知らない、ウイスキーとブランデーの境界線について、初心者の方にもわかりやすく紐解いていきましょう。
「ウイスキーのVSOP」という勘違いが生まれる理由
インターネットで検索をしたり、お店のウイスキーコーナーの隣を覗いたりすると、必ずと言っていいほど「VSOP」という文字に出会います。なぜ多くの人がウイスキーのランクだと勘違いしてしまうのでしょうか。
最大の理由は、日本を代表するメーカーがウイスキーと同じようなボトル形状でブランデーを販売しているからです。例えばサントリー V.S.O.Pやニッカ VSOP 白などは、スーパーの酒類コーナーでもウイスキーのすぐ隣に並んでいることがよくあります。
また、どちらも琥珀色をしていて、樽で熟成させるという共通点があるため、お酒に詳しくない方からすれば「VSOP=熟成が進んだ高級なウイスキーの称号」だと思ってしまっても不思議ではありません。
しかし、お酒の世界において「VSOP」はブランデー専用の格付け用語です。ウイスキーには、これに代わる別のルールが存在しているのです。
VSOPが意味する「4つのアルファベット」の正体
そもそもVSOPとは何を略した言葉なのでしょうか。これは英語のフレーズの頭文字を取ったものです。
- V:Very(非常に)
- S:Superior(優良な)
- O:Old(古い・熟成された)
- P:Pale(澄んだ・琥珀色の)
直訳すると「非常に優良で古く、澄んだ琥珀色のお酒」という意味になります。18世紀から19世紀にかけて、イギリスの王室がフランスのコニャック地方のメーカーに注文を出した際の要望がそのまま等級の名前になったと言われています。
ブランデーの世界では、このVSOP以外にも熟成度合いを示す記号がいくつかあります。
- V.S.(ベリー・スペシャル):熟成期間が比較的短いもの。
- V.S.O.P.:中堅クラス。バランスが良く、最も親しまれているランク。
- X.O.(エクストラ・オールド):非常に長く熟成された高級ランク。
これらはフランスの法律などによって、最低でも何年熟成させた原酒を使わなければならないという「コント(熟成単位)」のルールが厳格に決められています。
ウイスキーとブランデーは「原料」が決定的に違う
「VSOP」という言葉の有無以前に、ウイスキーとブランデーは全く別の飲み物です。最も大きな違いはその「原料」にあります。
ウイスキーは、大麦やトウモロコシ、ライ麦といった「穀物」を原料にしています。ビールを蒸留して樽で寝かせたもの、とイメージするとわかりやすいかもしれません。そのため、香ばしさやスモーキーさ、力強いコクが特徴になります。
一方でブランデーは、ブドウやリンゴといった「果実」を原料にしています。ワインを蒸留して樽で寝かせたものがブランデーです。果実由来の華やかな香りや、フルーティーな甘みが最大の特徴です。
例えば、人気のサントリー シングルモルト ウイスキー 山崎は穀物の恵みを凝縮したウイスキーですが、レミーマルタン VSOPはブドウの香りを凝縮したブランデーです。この違いを理解しておくだけで、ギフト選びの失敗はグッと減るはずです。
ウイスキーにはなぜVSOPという表記がないのか
では、なぜウイスキーにはVSOPのような便利な記号がないのでしょうか。それはウイスキーの世界には「数字による厳格な年数表記」という文化が根付いているからです。
スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーの多くには「12年」「18年」といった数字が書かれています。これは「そのボトルに入っている原酒の中で、最も若いものの熟成年数」を表しています。
ブランデーのVSOPは「だいたい4〜10年くらい熟成したもの」という、ある程度の幅を持ったランク付けですが、ウイスキーは「最低でも◯年寝かせました」という事実を数字で示すことを法律で義務付けています。
もし、ブランデーのVSOPに近い満足感をウイスキーで味わいたいのであれば、ザ・マッカラン 12年 シェリーオークのような「10年〜12年」表記のものを選ぶのが一つの目安になります。この価格帯や熟成感が、ブランデーのVSOPの立ち位置と重なることが多いからです。
迷った時の選び方!ウイスキー派とブランデー派の見分け方
「VSOP」を探しているということは、きっと美味しいお酒に出会いたいという気持ちの表れだと思います。自分用や贈り物を選ぶ際、どちらを選べばいいか迷った時のヒントをお伝えします。
ウイスキーを選んだ方がいいのは、次のような方です。
- ハイボールにして食事と一緒に楽しみたい。
- 焚き火のようなスモーキーな香りや、バニラのような重厚な香りが好き。
- 「12年」「17年」といった熟成の歴史を数字で感じたい。
おすすめの定番としてはジョニーウォーカー ブラックラベル 12年などが、世界中で愛される安心のクオリティを持っています。
一方で、ブランデー(VSOPなど)を選んだ方がいいのは、次のような方です。
- 食後にゆっくりとストレートやロックで香りを堪能したい。
- お菓子のような甘い香りと、とろけるような口当たりを重視したい。
- 優雅でリッチな気分に浸りたい。
定番なら、先ほども挙げたサントリー V.S.O.Pが日本の食卓にも合うマイルドな仕上がりで、コストパフォーマンスも抜群です。
まとめ:ウイスキーにVSOPはある?ブランデーとの違いや熟成度の意味を徹底解説!
改めておさらいすると、「VSOP」はブランデーの熟成ランクを表す言葉であり、ウイスキーには存在しません。もし店頭で「VSOP」という文字を見かけたら、それは果実の芳醇な香りを楽しむブランデーの世界への入り口です。
ウイスキーは「年数表記」でその品質を語り、ブランデーは「VSOP」や「XO」といった「記号」でその格調を語ります。この違いを知っているだけで、お酒選びの楽しさは何倍にも広がります。
どちらも樽の中で長い年月をかけて眠り、琥珀色に輝く芸術品であることに変わりはありません。あなたが手に取ろうとしているその1本が、ウイスキーであれブランデーであれ、そのラベルに刻まれた「時間の証」をぜひじっくりと味わってみてください。
次にバーや酒屋さんに足を運んだ時は、ラベルの数字や記号を眺めながら、その背景にある物語を想像してみるのも粋な楽しみ方ではないでしょうか。

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