「ビールはプリン体が多いから、これからはウイスキーにしよう」
健康診断の結果を見て、大好きな晩酌のスタイルを変えようとしている方は多いはずです。特に尿酸値が気になる世代にとって、ウイスキーは「救世主」のような存在に見えますよね。
しかし、ネットの情報や噂だけで「ウイスキーならいくら飲んでも大丈夫」と思い込むのは、実は少し危険かもしれません。たしかにウイスキーのプリン体は極めて少ないのですが、尿酸値を上げる要因はプリン体だけではないからです。
今回は、ウイスキーとプリン体の真実、そして痛風リスクを最小限に抑えながらお酒を楽しむための具体的な方法を、最新の知見をもとに分かりやすく解説します。
ウイスキーのプリン体含有量は「ほぼゼロ」という事実
まず結論からお伝えすると、ウイスキーに含まれるプリン体は他のアルコール飲料と比較して圧倒的に少ないです。
数値で見るとその差は歴然です。一般的なビールには100mlあたり約5mgから6mg程度のプリン体が含まれていますが、ウイスキーの場合はわずか0.1mgから0.3mg程度。測定値としては「ほぼゼロ」と言っても差し支えないレベルです。
なぜこれほどまでに差が出るのでしょうか。その理由は、ウイスキーが「蒸留酒」だからです。
蒸留という工程がプリン体をカットする
お酒には大きく分けて「醸造酒」と「蒸留酒」の2種類があります。
- 醸造酒(ビール、日本酒、ワインなど): 原料を酵母で発酵させて造ります。原料由来の成分や酵母の細胞成分がそのまま液体に残るため、プリン体が含まれやすくなります。
- 蒸留酒(ウイスキー、焼酎、ジン、ウォッカなど): 醸造した液体を加熱し、蒸気になったアルコール成分だけを集めて冷やし、再び液体に戻します。プリン体は揮発しないため、蒸留の過程で取り除かれ、ピュアなアルコール成分だけが抽出されるのです。
この製造工程の違いこそが、ウイスキーが「痛風に優しいお酒」と言われる最大の理由です。
プリン体ゼロでも尿酸値が上がる「アルコールの落とし穴」
「プリン体がほとんどないなら、ウイスキーを毎日たくさん飲んでも安心だね!」
そう思われた方は、ここで一度立ち止まってください。実は、痛風や高尿酸血症のリスクにおいて、飲み物の「プリン体量」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「アルコールそのものの作用」なのです。
アルコールが体内に入ると、主に3つのメカニズムで尿酸値を上昇させます。
1. 体内での尿酸産生を加速させる
アルコールが肝臓で分解される際、エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が急激に消費されます。このATPが分解される過程で、尿酸の「元」となる物質が作り出されてしまいます。つまり、お酒自体にプリン体が入っていなくても、アルコールを摂取すること自体が体内で尿酸を新しく作るスイッチを押してしまうのです。
2. 尿酸の排出をブロックする
通常、尿酸は腎臓を通じて尿と一緒に体の外へ排出されます。しかし、アルコールが分解される時に「乳酸」という物質が作られます。腎臓はこの乳酸を優先的に排出しようとする性質があるため、尿酸の排出が後回しにされてしまいます。出口を塞がれた尿酸は血液中に溜まり、結果として尿酸値が上がってしまうのです。
3. 脱水症状による濃縮
アルコールには強い利尿作用があります。飲んだ量以上の水分が体外に出てしまうことも珍しくありません。体が脱水状態になると、血液中の水分量が減り、相対的に尿酸の濃度が高まってしまいます。これが痛風発作の引き金になることもあります。
つまり、ウイスキーは「プリン体が少ない」という点では優れていますが、「アルコール度数が高い」という点では注意が必要なお酒なのです。
ウイスキー特有のメリット?尿酸排泄を促す成分の可能性
ここまで少し耳の痛い話をしてきましたが、ウイスキーファンにとって嬉しい研究報告もあります。
実は、ウイスキーやブランデーといった「木樽で長期間熟成される蒸留酒」には、尿酸の排出を助ける成分が含まれているのではないかという説があるのです。
熟成成分によるプラスの効果
いくつかの研究では、適量のウイスキーを摂取した際、摂取しない時や他のアルコールを飲んだ時に比べて、尿中の尿酸排泄量が増加したというデータが報告されています。これは、オーク樽での熟成中に溶け出した成分(ポリフェノールなど)が影響していると考えられています。
もちろん、これは「大量に飲めば尿酸が下がる」という意味ではありません。あくまで「適量であれば、アルコールによる悪影響を一部相殺してくれる可能性がある」という程度の期待値ですが、ビールを選ぶよりはウイスキーを選ぶ方が、多角的に見てもメリットが大きいと言えるでしょう。
痛風リスクを最小限にする「賢いウイスキーの飲み方」
ウイスキーの特性を理解したところで、次は実践編です。どのように飲めば、尿酸値を上げずに楽しむことができるのでしょうか。
ポイントは「希釈」「水分補給」「量」の3つです。
ハイボールを基本にする
ストレートやロックでちびちび飲むのもウイスキーの醍醐味ですが、健康を考えるならハイボールが最もおすすめです。
炭酸水で割ることで、アルコール濃度を適切に下げることができます。また、炭酸による満腹感も得られるため、飲み過ぎの防止にもつながります。
ただし、注意したいのは「割り材」の種類です。コーラやジンジャーエールなど、砂糖(果糖)が多く含まれる飲料で割るのは避けましょう。果糖は体内で尿酸値を上げる働きがあるため、せっかくのウイスキーのメリットを消してしまいます。プレーンな炭酸水や天然水で割るのがベストです。
「チェイサー」を相棒にする
ウイスキーを飲む時は、必ず同量、できればそれ以上の「水」を横に置いてください。
一口ウイスキーを飲んだら、二口水を飲む。このサイクルを繰り返すことで、血中のアルコール濃度と尿酸濃度の急上昇を抑えることができます。また、脱水症状の予防にも直結します。
「適量」の基準を知る
厚生労働省が示す「節度ある適度な飲酒量」は、1日平均で純アルコール約20gです。
ウイスキーに換算すると、ダブル(60ml)で1杯。ハイボールなら、家庭で作る一般的な濃さで1〜2杯程度が目安になります。これを守れている限り、尿酸値への影響は最小限に留められるはずです。
おつまみ選びで決まる!低プリン体な晩酌スタイル
ウイスキー自体のプリン体がゼロでも、一緒に食べるおつまみがプリン体たっぷりでは意味がありません。「ビールをウイスキーに変えたから、その分レバーや白子を食べても大丈夫」というのは大きな間違いです。
尿酸値を気にするなら、おつまみの選び方にもこだわりましょう。
おすすめの低プリン体おつまみ
- 野菜・海藻・きのこ類: 尿をアルカリ性に傾ける働きがあり、尿酸を溶かして排出しやすくしてくれます。
- 豆腐・納豆などの大豆製品: 植物性たんぱく質は動物性よりも尿酸値を上げにくいとされています。
- チーズ・ナッツ類: 意外かもしれませんが、乳製品はプリン体が非常に少なく、尿酸値を下げる効果も期待されています。ナッツは素焼きミックスナッツのような塩分の少ないものを選びましょう。
避けたい高プリン体おつまみ
- レバー・ホルモン類: 極めて高いプリン体が含まれます。
- 一部の魚介類: マイワシ、マアジの干物、白子、エビなどは要注意です。
- 肉類(特に赤身): 食べ過ぎは禁物です。
ウイスキーの芳醇な香りは、シンプルなナッツやドライフルーツ、あるいは少しのチーズとも非常に相性が良いものです。素材の味を活かした低プリン体なおつまみを開拓するのも、ウイスキーの楽しみの一つかもしれません。
ウイスキーのプリン体は本当に少ない?痛風リスクや尿酸値を上げない賢い飲み方を解説:まとめ
最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
ウイスキーは蒸留酒であるため、ビールなどと比較するとプリン体はほぼ含まれていません。この点では、痛風を気にする方にとって非常に適した選択肢と言えます。
しかし、アルコールそのものに尿酸値を上げる作用があるため、「プリン体ゼロ=いくら飲んでも安全」ではないことを忘れないでください。ハイボールとして楽しみ、たっぷりのチェイサーを飲み、そして低プリン体なおつまみを添える。この「賢い飲み方」を習慣にすることで、健康を守りながら長くウイスキーを楽しむことができます。
ウイスキーの種類は星の数ほどあります。自分に合った1本を見つけ、適量を守りながら、豊かなリラックスタイムを過ごしてくださいね。
尿酸値が気になるからとお酒を完全に諦めるのではなく、正しい知識を持って「付き合い方」を変えていく。それが、大人の賢いお酒の楽しみ方です。

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