「ウイスキーが、お好きでしょ。もう少ししゃべりましょ」
このフレーズを耳にして、琥珀色の液体が炭酸で弾ける音や、カウンター越しに微笑む美しい店主の姿を思い出さない人はいないはずです。日本のテレビ広告史においても、これほどまでに一つの楽曲と製品イメージが強く結びつき、なおかつ時代を超えて愛され続けているシリーズは稀です。
かつて「おじさんの飲み物」というイメージが強かったウイスキーを、若者や女性までが手に取る「ハイボール」へと変貌させたのは、間違いなくこのCMの力でした。今回は、歴代のマドンナ(店主)や歌い継がれる名曲の秘密、そして最新の出演者に至るまで、その魅力を余すことなく紐解いていきます。
時代を象徴する「マドンナ」たちの系譜
サントリーのウイスキーCM、特に「角ハイボール」のシリーズでは、その時代を象徴する女優がバーの店主を務めるのが恒例となっています。それぞれの時代で異なる「癒やし」と「憧れ」を提示してきた歴代出演者を振り返ってみましょう。
小雪(2007年〜)ハイボール復活の立役者
現代のハイボールブームの火付け役といえば、やはり小雪さんです。2007年から始まったこのシリーズでは、少し敷居が高いと感じられていたウイスキーを「ソーダで割る」というスタイルで鮮烈に提案しました。
都会的で凛とした美しさを持つ小雪さんが、カウンターの中で丁寧に サントリー ウイスキー 角瓶 を作る姿は、多くの視聴者に「自分もあんな風に格好よく飲んでみたい」と思わせる力がありました。この時期、飲食店で「ハイボール」の注文が激増し、日本の飲み会文化が劇的に変化したのです。
菅野美穂(2011年〜)親しみやすさと活気
小雪さんの「しっとりとした大人のバー」という雰囲気から一転、菅野美穂さんの時代には「活気あふれる居酒屋」のような、より親しみやすい空気感が加わりました。
笑顔あふれる彼女が「ハイカラ(ハイボールと唐揚げ)」を勧める姿は、ウイスキーが日常の食卓や賑やかな宴会の場にもふさわしいことを証明しました。共演者に芸人さんを多く起用したのもこの時期の特徴で、ウイスキーの持つ「楽しさ」が強調された時代です。
井川遥(2014年〜)究極の癒やしと憧れ
歴代で最も長く、そして多くのファンに愛されたのが井川遥さんのシリーズでしょう。彼女が演じたのは、どこか懐かしく、包容力にあふれた「行きつけのバーの店主」でした。
「ハイボール、お好きでしょ?」というささやくような台詞は、一日の疲れを癒やしてくれる魔法の言葉のように響きました。加瀬亮さんや田中圭さんといった豪華な常連客たちとのやり取りも、まるで短編映画を見ているような上質な時間を提供してくれました。
蒼井優(2024年〜)新たな物語の始まり
そして2024年、約10年ぶりとなる大きなバトンタッチが行われました。新しく店主となったのは、蒼井優さんです。これまでの「癒やし」という路線を継承しつつも、より軽やかで現代的な空気感を纏っています。
染谷将太さんを常連客に迎え、余計なセリフを削ぎ落とした構成は、まさに「お酒そのものと、そこにある時間」を楽しむ原点回帰とも言えるかもしれません。これからの新しいハイボールの歴史をどう彩ってくれるのか、期待が高まっています。
名曲「ウイスキーが、お好きでしょ」の誕生秘話
CMの成功を語る上で欠かせないのが、あのジャジーなメロディです。実はこの曲、もともとは1990年に サントリー ウイスキー クレスト12年 のCMソングとして誕生したものでした。
作詞は田口俊さん、作曲は杉真理さんが担当。当時、演歌歌手として頂点にいた石川さゆりさんが「SAYURI」名義で歌唱したことで大きな話題を呼びました。こぶしを封印し、ウィスパーボイスで歌い上げるスタイルは、当時の音楽業界でも衝撃をもって受け止められました。
この楽曲には、単なるCMソングを超えた、大人の男女の繊細な心理描写が込められています。歌詞に登場する「ありふれた話」や「消えた恋」といったワードが、琥珀色の液体の中で溶け合う氷の音と重なり、聴く人の想像力を刺激するのです。
楽曲を彩った歴代のカバーアーティストたち
この名曲は、シリーズごとに異なるアーティストによってカバーされ、その都度新しい表情を見せてきました。同じメロディでも、歌い手によってこれほどまでに印象が変わるのかと驚かされます。
- ゴスペラーズ: 小雪時代に起用。アカペラを主体とした厚みのあるハーモニーで、バーの夜をよりロマンチックに演出しました。
- 竹内まりや: 都会的で洗練されたアレンジ。女性の自立と優しさを感じさせる歌声が、大人の休日をイメージさせました。
- ハナレグミ: 菅野美穂時代。肩の力が抜けた、温もりのある歌声は「ハイカラ」の楽しい雰囲気に見事にマッチしていました。
- 田島貴男(Original Love): 井川遥時代初期。ソウルフルで情熱的な歌声が、バーの深い夜を彩りました。
- 折坂悠太: 独特の節回しと深い情緒。新しい時代の風を感じさせる歌唱として注目されました。
- GLIM SPANKY: ロックでハスキーな歌声。これまでのイメージを覆す力強さが、ウイスキーの新たな一面を引き出しました。
どのアーティストも、この曲が持つ「普遍的な大人の哀愁」を大切にしながら、自分たちのカラーを注ぎ込んでいます。最新のCMでも「次は誰が歌うのか」が発表されるたびに、SNSなどで大きな話題となるのは、この曲がもはや日本のスタンダードナンバーとして定着している証拠です。
演出のこだわり:音と映像が作る「シズル感」
サントリーのCMをじっくり見ていると、あることに気づきます。それは「音」の演出の素晴らしさです。
特に近年は、ナレーションを最小限に抑え、氷がグラスに当たる「カラン」という音や、強炭酸がパチパチとはじける音を強調する手法が取られています。これはASMR(心地よい音)的な効果を狙ったもので、視聴者の聴覚に直接訴えかけ、喉を鳴らさせる仕掛けです。
また、照明にも並々ならぬこだわりが感じられます。逆光気味にライティングされた サントリー 角ハイジョッキ は、ダイヤモンドのように輝き、炭酸の泡が一筋の光となって昇っていく様子を美しく描き出します。
こうした細部へのこだわりが、単なる広告を超えて「一つの作品」としての完成度を高めているのです。
なぜ私たちはこのCMに惹かれるのか
私たちがこのCMシリーズに惹きつけられる理由は、単に美しい女優が出演しているからだけではありません。そこには、慌ただしい日常から切り離された「止まった時間」への憧れがあるからではないでしょうか。
スマホを置き、誰かと、あるいは自分一人で、ゆっくりとグラスを傾ける。そんな贅沢な時間の象徴として、あのバーのカウンターがあり、あの歌が流れているのです。
「ウイスキーがお好きでしょ」という問いかけは、私たちに「自分のための豊かな時間を持っていますか?」と問いかけているようにも聞こえます。
まとめ:「ウイスキーがお好きでしょ」CMの歴代出演者と歌手一覧!名曲が彩るハイボールの歴史
1990年の誕生から30年以上。石川さゆりさんの歌声から始まり、小雪さん、菅野美穂さん、井川遥さん、そして蒼井優さんへと引き継がれてきた「ウイスキーがお好きでしょ」の世界観。
このCMシリーズは、単にお酒の美味しさを伝えるだけでなく、日本の夜の過ごし方そのものをデザインしてきました。名曲が持つ力と、時代ごとのマドンナたちの輝きが重なり合い、私たちは今夜もまた、琥珀色のグラスを手に取りたくなるのです。
もし今夜、少しだけ一人の時間が持てたなら、あるいは大切な人とゆっくり話したくなったなら、お気に入りの サントリー ウイスキー 知多 や サントリー シングルモルト ウイスキー 山崎 を用意して、あのメロディを口ずさんでみてはいかがでしょうか。
「ウイスキーがお好きでしょ」CMの歴代出演者と歌手一覧!名曲が彩るハイボールの歴史を振り返りながら飲む一杯は、いつもより少しだけ深く、優しい味がするはずです。

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