「今日の夕飯、何がいい?」と聞かれて、真っ先に名前が挙がる国民的メニューといえば、やっぱり鶏の唐揚げですよね。
でも、いざ家で作ってみると「お店みたいにサクサクにならない」「中まで火を通そうとするとお肉がパサパサになる」「お弁当に入れるとベチャッとしてしまう」なんて悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
実は、美味しい鶏の唐揚げを作るには、単なる「揚げ方」だけでなく、揚げる前の準備から衣の設計まで、科学的に理にかなった「ちょっとしたコツ」があるんです。
今回は、誰でも失敗せずに、冷めても感動するほど美味しい究極の唐揚げを完成させるための全技術を余すことなくお伝えします。
なぜあなたの唐揚げは「普通」で終わってしまうのか?
「美味しい鶏の唐揚げ」を追求する前に、まずは多くの人が陥りがちな失敗の原因を整理してみましょう。
多くの家庭で見られるのが、「肉に下味をつけて、粉をまぶして、いきなり高温の油に入れる」という流れです。これでは、外側だけが先に焦げてしまい、中は生焼けだったり、逆に火を通しすぎて水分が逃げ出し、お肉がカチカチになったりしてしまいます。
また、油の温度管理がうまくいかないと、衣が油を吸いすぎてしまい、重たくて胃もたれするような仕上がりになってしまうことも。
プロの味を再現するためには、「保水」「衣の配合」「2度揚げ」という3つのステップに分けて考える必要があります。
準備編:お肉のポテンシャルを最大限に引き出す
美味しい唐揚げの主役は、もちろん鶏肉です。まずは素材選びと、お肉をジューシーに保つための魔法の下準備から見ていきましょう。
鶏もも肉は「大きめ」にカットするのが鉄則
ジューシーさを求めるなら、脂ののった「鶏もも肉」を選びましょう。ここで重要なのがカットの大きさです。
揚げることでお肉の水分が抜け、一回りから二回りほど縮みます。そのため、最初から小さく切りすぎると、仕上がりが硬くなってしまいます。理想は4cmから5cm角。やや「大きいかな?」と感じるくらいが、中にたっぷりと肉汁を閉じ込めるための秘訣です。
包丁を新調して、断面を潰さないようにスパッと切るだけでも、肉汁の流出を防ぐことができますよ。
「ブライン液」でお肉の保水力を高める
ここが最大の差別化ポイントです。ボウルに水、塩、砂糖(各水に対して5%程度)を混ぜた「ブライン液」を作り、そこにカットしたお肉を30分から1時間ほど漬け込んでください。
これは科学的にも証明されている手法で、塩分がお肉のタンパク質をほぐし、砂糖が水分をがっちりキャッチしてくれます。この一手間だけで、揚げる工程で水分が飛んでしまうのを防ぎ、驚くほどプリプリの食感になります。
味付け編:中までしっかり旨味を染み込ませる
ブライン液から引き上げたお肉の水分をしっかり拭き取ったら、いよいよ下味をつけていきます。
黄金比の調味料で深みを出す
基本は醤油、酒、おろし生姜、おろしニンニクです。酒に含まれる成分がお肉をさらに柔らかくし、生姜の香りがお肉の臭みを消して食欲をそそる香りに変えてくれます。
ここで隠し味としておすすめしたいのが「マヨネーズ」です。
マヨネーズに含まれる卵黄と油の乳化成分がお肉の繊維をコーティングしてくれるので、冷めても固くなりにくい唐揚げになります。
漬け込み時間は「長すぎない」のがコツ
「一晩漬け込んだ方が味が染みるのでは?」と思われがちですが、実は長時間漬けすぎると塩分の浸透圧でお肉から水分が出てしまい、逆に身が引き締まって硬くなってしまうことがあります。
下味をつけてから揉み込み、15分から20分程度置くだけで十分。お肉の食感を活かしつつ、表面にしっかりと旨味を乗せるのが理想的です。
衣編:サクサク感が持続する「ハイブリッド衣」
唐揚げの最大の魅力は、なんといってもあの「サクッ」とした心地よい食感ですよね。
片栗粉と小麦粉の使い分け
衣に使う粉には、主に片栗粉と小麦粉がありますが、それぞれ役割が違います。
- 片栗粉(馬鈴薯澱粉):粒子が荒く、カリッとした硬めの食感を生む。
- 小麦粉(薄力粉):粒子が細かくお肉に密着し、旨味を閉じ込める。
プロが推奨する「究極の比率」は、片栗粉3に対して小麦粉1の割合です。小麦粉でお肉の旨味をしっかりガードし、その上から片栗粉でクリスピーな層を作ることで、時間が経ってもベチャつかない理想の衣が完成します。
ボウルの中で粉をしっかり混ぜ合わせ、お肉一つひとつに丁寧に、かつ余分な粉はしっかり叩き落としてまぶしましょう。
揚げる直前の「追い粉」テクニック
さらにサクサクにしたいなら、粉をまぶして少し置いた後、揚げる直前にもう一度軽く片栗粉を振りかけてみてください。これを「二段まぶし」と呼びます。最初につけた粉がお肉の水分と馴染んで密着し、直前につけた粉が乾燥した状態を保つため、油に入れた瞬間に爆発的なサクサク感が生まれます。
揚げ方編:温度変化を操る「2度揚げ」の技術
いよいよメインイベントの「揚げる」工程です。ここでは温度計を活用して、正確な温度管理を行うことが成功への近道です。
1回目:160℃の低温でじっくり「蒸す」
まずは低温の油でお肉を泳がせます。一度にたくさん入れすぎると油の温度が急激に下がってしまうので、鍋の表面積の半分くらいまでにするのが目安です。
1回目の目的は、お肉の中にゆっくりと熱を伝え、中心まで火を通すこと。3分ほど揚げて、衣がうっすらと色づいてきたら一度引き上げます。
放置して「余熱」を利用する
油から出したお肉を、すぐに食べたい気持ちを抑えてバットの上で3分から5分ほど休ませてください。
実はこの「休ませる時間」こそが、ジューシーな唐揚げを作る最大のポイントです。余熱でじわじわとお肉の中心まで火を通すことで、タンパク質が急激に縮むのを防ぎ、肉汁をお肉の中に留めておくことができるのです。
2回目:190℃の高温で「焼き切る」
最後に、油の温度を190℃まで一気に上げます。休ませていたお肉を再び油に戻し、1分弱の短時間で仕上げます。
この時、お玉や網でお肉を空気に触れさせながら揚げると、衣の水分がさらに効率よく飛び、表面がキツネ色の見事なサクサク状態になります。泡が小さくなり、音が「パチパチ」と高い音に変わったら完成の合図です。
盛り付けと楽しみ方
最高の状態に仕上がった唐揚げは、盛り付けにもこだわりたいところです。
お皿に盛り付ける際は、天ぷら紙を敷いて余分な油を吸わせましょう。レモンを添えるのは定番ですが、食べる直前に絞ることで、酸味が油っぽさをリセットし、何個でも食べられるような爽やかな後味になります。
また、マヨネーズに七味唐辛子を混ぜたディップや、おろしポン酢を用意すれば、家族みんなが最後まで飽きずに楽しめる「唐揚げパーティー」の始まりです。
お弁当でも美味しさをキープする方法
お弁当に入れる場合、一番の敵は「自分の熱で出る蒸気」です。揚げたての熱いままお弁当箱の蓋を閉めてしまうと、蒸気で衣がふやけてしまいます。
完全に冷めてから詰めるのはもちろんですが、前述した「2度揚げ」と「片栗粉多めの衣」を守るだけで、お昼時になってもサクサクとした食感が驚くほど残っています。
もし翌日に残ってしまった場合は、オーブントースターで軽く焼き直すと、揚げたての食感がかなり復活するので試してみてください。
まとめ:美味しい鶏の唐揚げを作るために
家庭料理の定番だからこそ、奥が深いのが唐揚げの世界です。
お肉のカットサイズにこだわり、ブライン液で保水し、小麦粉と片栗粉のハイブリッド衣を纏わせ、2度揚げで仕上げる。この一つひとつのプロセスが積み重なることで、お店で食べるような、あるいはそれ以上に家族から愛される「究極の一皿」が出来上がります。
料理は科学と言われますが、唐揚げはその面白さを最も実感しやすい料理かもしれません。特別な高級食材を使わなくても、技術と知識があれば、いつもの食卓を最高のレストランに変えることができます。
ぜひ今夜、今回ご紹介した「美味しい鶏の唐揚げ」の作り方を実践して、そのサクサクとジューシーな驚きの食感を体験してみてください。一度この味を知ってしまったら、もう元の作り方には戻れなくなるはずですよ。

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